2021/10/18 16:19




いつもやってるつもりだったのですが、

こんなに仕込みを丁寧に行ったシーズンはなかったように感じています。


もちろん、毎年新茶が出てきてテンションが上がって、仕込みに入って入念に仕込む。

出来上がるとすぐにお湯に淹れてテイスティングを行う。


素材の味がしっかり出せてるかなって誰も感じない部分を口の中で、

そして戻ってくる香りの中で探しながら

一杯のお茶を味見する。


2021年は白玄堂史上最も良いオーガニック宮崎茶が入荷でき

いつもより時間や労力をかけて仕込む毎日でした。


荒茶のコンディションがいいとやっぱりテンションが上がる。

露地栽培で香りも良いし、

化学肥料を全然使用してないから秋落ちもしない。


白玄堂は

「余韻」と「風味」

を大切にしています。

人でいうところの

「個性」と「性格」

といったところでしょうか。


品種や製法でももちろん個性は出ますが、

生産者や生産地によっても個性が出ます。

そこに面白さを感じて私はお茶の世界が好きになりました。

古いお茶の文献にも嗜好品だからこそいろんな飲み方があって良いと締めくくられるものもあります。


あたかも高級品を作っていたり、

高級品だと言われ購入しその旨味を堪能しているものが

本筋というか、本流でもなく、

様々なお茶が世界中で作られている中の一つの旨味が強いお茶なだけです。


農家さんが作った荒茶はお茶の市場で上場され、

売買されるのですが、市場で売れるお茶は決まって「濃い緑色」「旨味が強い」ものがとても人気で高く売買されます。

お客様のニーズがそこには反映されているとは思いますが、

私がお茶を学んだ原点は、「手揉み茶」です。

5時間かけて蒸した葉をホイロの上で揉んでいき乾燥させる。

針のように葉っぱを丸めていく作業を様々な工程を経て行うのですが、

それを習得することが非常に難しく、日々の鍛錬によってようやく身につく製法となります。

明治時代は手もみ茶を輸出していましたが、

こくりと呼ばれる技術が難易度が高く、針のように伸ばさないくるっとまるまったグリ茶なるものを手もみで作り世界に出航させてました。

きっと風味がとてもよく当時のお茶は煎茶でもグリ茶でも美味しかったに違いありません。


今は機械でなんでもできます。

見た目を綺麗にすることだってできるし、

色を濃く出すお茶だって作れます。

旨味だって畑や加工でどうにでもできます。

もう、工業製品です。


白玄堂も機械を使います。

ただ、大切にしていることがあって

それは、

「畑の風味を届けたい」

生葉はさすがに届けられないので、

農家さんが摘み取ってすぐに蒸します。

効率よく揉みながら乾燥して、荒茶が出来上がります。

その荒茶を白玄堂が買取し、選別や焙煎などを行い袋詰めを行います。


その袋詰めの際に

皆さんに畑の風味をお届けしたいって思いを込めて手詰めしています。


小さなお茶屋です。


沢山、売れるお茶は作れませんが、

個性と風味を大切にすることがとても得意です。


白玄堂のお茶を飲むといつもと違うお茶の味がするけど、お茶の味。

と言われたり、

口の中の風味がずーっと消えない!とか

喉がざらざらしない、すっと喉を通り抜けるとか

喉が乾かない!!とかのコメントを沢山いただきます。


新芽を摘むところから

お客様がお茶を口に運び楽しむまで

私はお茶の伴奏者としてずっと鍵盤の和音をなぞっている感覚です。


お茶がメロディーラインなので飲みさえすればお茶だねって分かるけど、

それに伴奏というなの誰がどこでどんな風に作ってって話をすることでその音楽を心の深いところまできっと届くんじゃないかって思ってずっと伴奏者として歩んでいます。


毎年お茶の風味は変わるし、

ずっと同じなんて作れないので

そうした自然の話をもっと皆さんと共有したいと考えています。